フィリピンでの医師不足、悩ましい国内事情

フィリピンでは、 過去10年間に医師の移住が増加し医師不足が深刻である。 健康庁(Department of Health)の保健人的資源開発局(Health Human Resource Development Bureau)のElvira Dayritは、政府は現在直面している医師不足を緩和、 医療の質の向上を目指す計画を立てていると語った。

海外在住フィリピン人委員会(Commission on Filipinos Overseas)調査のデータによると、 海外移住した医師数が2005年には297名であったのに対し、 2015年には3,082名に増加した。 これはインドに次いで世界で2番目に多い医師の輸出である。

フィリピンでは人間関係を良好に保ち、 英語流暢に話せる良質な医師が多数存在することが強みであるが、 国内にこの強みが活かされていないのが現状である。 2007年の調査によると、 10人の死亡者のうち7人は医療機関による診察はなされていなか った。これは首都圏外の他のすべての州で同様の傾向がみられた。 Dayritはこの人数が近年では10人中4人に減少したと強調 するが、依然として憂慮すべき傾向である。

医師の海外移住の原因は、 彼らが得ている低い報酬のためだろうとDayritは主張する。 保健人的資源開発局(Health Human Resource Development Bureau)のデータによると、 フィリピン国内の私立病院の医師の収入は平均で毎月358ドル、 年収で換算すると4,296ドルと低収入である。 一方米国では医療アシスタントでさえ平均年収は59, 317ドルである。 この現状を見て彼らが移住するのを責めることはできない。 実際医療従事者の海外移住を制限していない為、 外務省の国内機関への批判はあがっていない。

海外在住フィリピン人委員会(Commission on Filipinos Overseas)でも医療従事者の海外移住を制限するべきでは ないという意向だ。 なぜなら彼らの収入からの送金がフィリピンに収入をもたらしてい るからである。
政府が医師の移住を管理できないことを考えると、 他の方法で医療の質の低下を抑える必要がある。 その解決策の1つとしてフィリピン政府は供給過剰状態である看護 師を利用し、看護師の活動の範囲を広げることも検討中である。

フィリピンの海外労働者の出稼ぎ送金額はGDPの1割に達すると 言われており、 国の予算に与える影響も軽微ではなくなってきている。 医師を含む出稼ぎ労働者からの送金に頼らないといけない反面、 国の医療の質の向上も大きな課題になっている為、 フィリピン政府は難しい舵取りを迫られている。

 

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