2018年以降にアジア発でイノベーションが起きそうな注目ヘルスケア分野(前編)

世界の半分以上の人口、世界最大の市場規模、そして最もダイナミックな経済成長をしているにも関わらず、アジアはこれまでヘルスケアイノベーションの最前線には立っていなかった。それどころか、未来の治療に関するイノベーションに関してはアジアは遅れをとってきた。

しかし、この兆候に変化が起こり始めている。増えつつある人口と急速な高齢化の中で、アジアの人々は益々より良いケアを求めるようになっており、この点に対して投資家はよりリスクを負うようになっている。アジアのヘルスケアイノベーションの多くは初期段階にあり、その成功は保証されていないが、政府の支援も受けながら、最先端の医療技術を構築しようと試みている。

下記は2018年以降にアジアにおける大きなヘルスケアのトレンドと 、今後アジア発でイノベーションが起こる可能性のある注目分野である。

ゲノミクス

ゲノミクスは、中国が国を挙げて取り組んでいるイノベーション分野の1つである。
ゲノミクスとは、糖尿病等の病気のリスクや、特定の医薬品へのリスク等の情報を提供する為の遺伝子のマッピングである。パターンを検出するには膨大な数のゲノムを分析する必要があるが、ここに中国の優位性がある。

サンプル数で言うと、世界最大の13.8億人という人口を誇る中国では世界一のサンプル数を集めることが可能な環境にある。また、解析するゲノム配列の数においても、英国が10万個、米国が100万個のゲノム配列を解析しているのに対し、中国は1億個の配列を解析していると言われている。

中国が他国と違うのは、個人情報保護の観点から慎重な声が根強い欧米諸国に対し、中国の国民性がゲノム解析に関して寛容である点である。その為、生命倫理やその他の面から見ても欧米諸国が踏み込めないような領域の研究も可能だ。

そのような環境で成長を遂げたのが、深センを拠点に置くBGIだ。最新DNAシーケンサーの保有台数は世界一で、日本やアメリカ等、複数の海外にも拠点を構える。今年7月には深セン市場に上場(約80億円調達)し、いまや世界最大規模のゲノム解析企業と言われている。
同じく中国企業であるiCarbonXもゲノム解析の巨大企業で、同社はよりパーソナライズされた医学アドバイスを提供するために、個人のゲノム分析の上に医療記録や行動からデータを重ねて、医療サービスを提供することに取り組んでいる。

また、政府のバックアップも他のどの国よりも強力である。2016年3月に米国が2億1,500万ドルを投じて100万人の米国民のゲノム解析を実施する計画を発表した。これに対し中国政府はその約1年後に米国の規模をはるかに上回る、数十億ドル規模のゲノムプロジェクトを発表した。
この計画によると、政府の負担で今後15年間にBGIの他に3つの研究機関で数百万人の中国人ゲノムを解析する予定だ。

カスタマイズ医療(個別化医療)とは患者の遺伝性や特性によって治療をカスタマイズする最新の医学であるが、カスタマイズ医療の前進にイノベーションを起こすのは、膨大な数の国民の遺伝子データを利用している中国なのかもしれない。

バイオ医薬品

近年の癌や関節炎などに対する最先端の治療法は、生きた細胞やたんぱく質から作られたバイオ医薬品や先行バイオ医薬品と類似品であるとして承認され、かつ安価なバイオシミラー(バイオ後続品)である。

韓国の世界有数の大企業サムスンバイオロジックス(Samsung BioLogics Co.)は、これまで半導体で培ったノウハウを駆使し、ハイテク機能を備えた大規模な工場を作り、バイオ医薬品の量産体制に入っている。

また、これまで世界に安価の有効成分や模倣薬を供給していた中国も、現在では重要なバイオ医薬の主要生産国になっている。バイオ利用臨床試験の数では中国は米国の次に多い第2位であり、中国のWuxi Biologics(Cayman)Inc.はこの分野でのビックプレイヤーである。